あじは味なり、その味の美をいふなり

アジ

―あじは味なり、その味の美をいふなりといへり
かの江戸時代の学者、新井白石は『東雅』でこう述べています。初夏を思わせる潮風とともに脂がのって、おいしくなるアジの漢字には、その旬の時期が表されています。以下より、アジを表す漢字を選びなさい。
① 魳
② 鯵
③ 鰈
④ 鯥 

解答: ② 鯵
解説:鯵の字の「参」の文字は、旧暦の3月(いまの5月ごろ)にあたり、このころが旬だから、といわれている。
あじといえば、一般にいちばん多く獲れる“マアジ”をさすが、白身を想わせるような味わいのシマアジ、開きでおなじみのムロアジも。豊後水道の流れの速い瀬に生息するあじは特に美味で、“関あじ”として一本釣りされる高級魚。どの種も体の側線に、ぜいご(あるいは、ぜんご)と呼ばれる鋭い棘のようなウロコが発達しているのが特徴。
うまみ成分のイノシン酸が豊富で、脂肪量とのバランスが良く味は淡白。動脈硬化や血栓の予防にもよいとされるDHA,EPAもさんま、さば以上に含まれる。
盛りの時季のアジは刺身やたたきなど生がおいしく、生姜や葱などの薬味とよく合う。たたきが広まったのは、伊豆の漁師が船でとれたての鯵のはらわたをとり、味噌を混ぜた簡素な料理「沖なます」から。開いて天日干しした干物は、味が凝縮され、生食とは違った旨みを楽しむことができる。
ところで、マアジには2種類あるのをご存知だろうか。浅瀬にいてあまり移動しない「黄アジ型」と、やや深い場所で回遊する「黒アジ型」である。黄アジはいわゆる「根つきのアジ」で、「根つき」とはアジやサバのような回遊魚が一ヵ所に居ついたものをいう。小ぶりながら脂ものって、黒アジと比べ旨みが強いのが特徴で、さきほどの関あじなどのように各地でブランド化が進んでいる。
①はかます、③はかれい、④はむつ。

尾山 雅一 (日本さかな検定代表理事)

投稿者: 尾山 雅一 (日本さかな検定代表理事)

平成21年、一般社団法人 日本さかな検定協会を立ち上げる。自ら日本各地をめぐり、検定の副読本執筆まで手がける魚食文化発信のエキスパート。 日本さかな検定(愛称:ととけん)とは、近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組み。 2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年には全国12会場まで拡大。小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出。今年は6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡ほかの各会場で開催予定。