女房を質に入れても、食べたい魚

山79かつお

季節回遊するこの魚は春から初夏にかけてと、秋獲れと年に2度おいしさを味わえます。初物をなにより珍重した江戸っ子の心情を詠んだ川柳の下線部にふさわしい魚を選びなさい。

女房を質に入れても初_  (江戸川柳)
① 鯛
② 鰆
③ 鯵
④ 鰹

解答:④ 鰹(かつお)
解説:桜前線が北上するころ、かつおも南の海から黒潮にのって日本列島の沖合いを北上し始める。春から初夏にかけて獲れる初かつおは季節ものとして江戸時代から珍重され、4月から5月にかけて伊豆半島近海でとれる初物はことさら江戸っ子に人気があった。この川柳はかつおの生食の習慣が定着した江戸期に詠まれた句で、初物に大金を投じても惜しまない江戸っ子の心意気を表わしている。
かつおは季節によって、かなり味わいが異なる魚で、春の初かつおは脂が少なく、皮付きのまま火であぶって氷水で冷やして作るたたきがおすすめ。お腹側の皮が薄くてやわらかいので、銀皮造りもおすすめ。秋どれの戻りかつおは皮を引かないと食べられないが、脂があるので刺身にするのが一番。すこし鮮度が落ちたものは、塩ゆでして表面を乾かした「なまり」にしてもおいしくいただける。
肉がやわらかく、鮮度が急に落ちるかつおは、鎌倉時代頃まではおもに乾燥させ堅くした食材としていたため「堅魚(かたうお)」と呼ばれていたものが、音がなまって「かつお」となり、漢字も堅と魚をくっつけて鰹となったといわれる。
①はたい、②はさわら、③はあじ。

尾山 雅一 (日本さかな検定代表理事)

投稿者: 尾山 雅一 (日本さかな検定代表理事)

平成21年、一般社団法人 日本さかな検定協会を立ち上げる。自ら日本各地をめぐり、検定の副読本執筆まで手がける魚食文化発信のエキスパート。 日本さかな検定(愛称:ととけん)とは、近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組み。 2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年には全国12会場まで拡大。小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出。今年は6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡ほかの各会場で開催予定。