春の出合いもの 若竹そば

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日本料理では、その時季に出回る旬のもので、料理の相性のよいものを、“出合いもの”という。春の出合いものである、たけのことわかめで作る若竹煮も、そのひとつ。今回は、それをおそばにした若竹そばを味わうべく、浅草橋にお店を構える老舗「あさだ」を訪れた。

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創業は江戸安政元年、1854年というこのお店。この日は遅いお昼ごはんで到着したのが夕方近くになってしまったのだけれど、店内はほぼ満席、みんな早くも一杯やっている、といったところだった。あーあ、私も日本酒が飲めればなー、こういうお店でお酒と料理を楽しんで、〆におそば! なんてことができるのに。残念ながら日本酒を飲むとすぐに眠くなってしまうから、やっぱり、ここはそば通として。おそばだけを、純粋に味わうことに徹していこうと思います。

そんなことをひとり考えていたら、10分ほどで若竹そばが運ばれてきた。

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つゆの良い香りが湯気とともにたちこめるけれど、そしておそばを食べにきたのにごめんなさいなのだけれど、最初に本日の主役、たけのこをひと口いかせていだきます! …ひと口かじると、シャキシャキの歯ごたえが、たまらなくおいしい。ふにゃふにゃの水煮のたけのことは違うのだ。「あさだ」はお料理もおいしいと聞いていたからもちろん期待はしていたけれど、その期待を上回る味。ちなみにご主人によれば、鹿児島県産の早掘りのたけのこを使っているのだとか。そして、色鮮やかなわかめはすごーく肉厚! うちで使う乾燥カットわかめと違って、かみ応え十分、ぷりぷりの食感であった。かつおのだしが香るつゆは、あったかくて、おなかにじわ〜っと沁み入って。

あぁ、あったかいおそばって、おいしいんだ。実はこれまで、もりそば派だった私が温かいおそばのおいしさに目覚めたことは、この連載を始めたおかげかもしれない。旬の食材で作られたおいしいおそばでお腹を満たすことができて、幸せだな〜、日本に生まれてよかったな〜なんて思うのは、大げさだろうか。

一年中、いつでもどこでも何でも食べられる現代だからこそ、いまが一番おいしい食材を、ていねいに味わう。それこそが、季節のおそばのベースにしていきたいことだと、改めて思った。

◇今回のお店は
江戸蕎麦手打處 あさだ
住所:東京都台東区浅草橋2-29-11
浅草橋駅から、徒歩5分ほど

◇いただいたのは
季節の種物 若竹そば 1,290円(税込)
※期間限定のメニューです。

投稿者: 吉田 真那 (季節のあるきかた編集部)

茨城県出身。幼いころから本や雑誌を読むことが好きで、憧れだった出版業界に入る。現在は、美容や食関連の書籍・広告の編集に携わり、日々奔走中。とくに興味のある分野は、衣・食・住、海外文化、そして人。「季節のあるきかた」では、等身大の視点から情報を発信していく。