ながめを何にたとふべき

sumidagawa

清明とは春先の清らかで生き生きとした様子を表した「清浄明潔」という語を略したもの。

万物が若返り、清々しく生き生きと明るく美しいころのことをいいます。若葉が萌え、花が咲き、鳥が歌い舞う、生命が輝く季節の到来です。
清明と生命、どちらも同じ読みのせいか、静かに湧き出るようなエネルギーを感じます。
沖縄ではこの清明に、先祖供養の清明祭り(シーミー)が行われ、墓前に親族が集まり、酒・花・お重を供えた後、皆でご馳走をいただく習慣があるそうです。

1年のうち、最も過ごしやすいうららかなこの時季に思い出す曲と言えば、滝廉太郎作曲の歌曲集『四季』の第1曲「花」。春の隅田川の情景とともに、オールで水面を掻いて進んでいくボートの様子が描かれています。

春のうららの 隅田川
のぼりくだりの 船人が
櫂(かひ)のしづくも 花と散る
ながめを何に たとふべき

実は歌曲集『四季』には、第1曲『花』の他に、第2曲『納涼』、第3曲『月』、第4曲『雪』とあるのですが、第1曲『花』があまりにも有名になり過ぎたせいもあって、ほかの3曲はほとんど演奏されることはありません。逆に言えば、春の情景こそが、あまりにも印象的で、しっくりときたせいかもしれませんね。

投稿者: 望月 恭子 (季節のあるきかた編集部)

出版社勤務、フリーエディターを経て、出版・広告の企画・制作会社を設立、昨年創立25周年を迎えた。食品、美容、ファッションなど女性や生活に関わるテーマを幅広く扱う。編集を手がけた書籍、ムック本は40冊を越える。現在、専門学校で若い世代にマーケティングの基本などを教えている。