菜の花そば

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「立ち食いそば」。それは、駅のホームやガード下にあり、サラリーマンから学生までが集う、“男の聖域”(偏見だろうか)。

「女性立ち入り禁止」という見えない看板が行く手を阻み、「立ったまま食べるなんて、はしたない!」「バッグやコートを置く場所はあるのか?」「ひとり焼肉もひとり牛丼もしたことがない私でも、入れるの?」といった数々のハードルが待ち受ける、近くて遠いお店。

その存在が、実はこの企画が決まったときから秘かに気になっていた。未知の領域に踏み込んでみたい(大げさ…?)という思いが、こころの片隅にあったのだ。
それから、立ち食いそばに行きたい理由が、もうひとつ。前回のおそばは、おいしかった。とてもおいしかった。だけど、お昼から1700円は高すぎる! というツッコミがかなりあったのだ(もっともだ。いまどき、1000円以下でおいしいランチを食べられるお店はたくさんある)。だから今回は、できるだけ安く、おいしく季節を味わえるお店に行きたかった。

そこで向かったのが、西葛西の立ち食いそば、「やしま」。
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駅を出て徒歩1分、食券を購入して店員さんに渡し、待つこと1分。なんという早さ。あっというまに、目の前に菜の花そば(380円!)が差し出された。
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緑が鮮やかな菜の花(我が家の食卓にのぼることは滅多にない…。今年こそ!)は、あの黄色い花からイメージされるかわいらしい雰囲気とは裏腹に、ちょっと苦味がある。茎の部分はシャキシャキッとした歯ごたえで、なかなか芯が強い感じがした。「周りの人の目が気になるかも〜」と思っていたけど(いや、誰も見てないって)、なんと私の両隣も女性のお客さん。立ち食いそばは、男の聖域ではなかった。

お店を出て、思った。こんなにお財布にやさしくて、季節を感じられて、おなかを満たしてくれるお店に足を向けない女性のみなさん、もったいない! と。カウンターのなかでもくもくとあがる湯気に包まれて、お店に流れる懐メロを聞きながら、女ひとり、そばをすする。なんだか味があって、良いじゃないか。おとなにならないと、きっとできなかったことだもの。春のはじまり、立ち食いそばデビューを果たし、そんなことを思った。

◇今回のお店は
やしま
住所:東京都江戸川区西葛西6-14-31 メトロセンター2番街
西葛西駅から、徒歩1分ほど
◇いただいたのは
菜の花そば 380円(税込)※期間限定のメニューです。

投稿者: 吉田 真那 (季節のあるきかた編集部)

茨城県出身。幼いころから本や雑誌を読むことが好きで、憧れだった出版業界に入る。現在は、美容や食関連の書籍・広告の編集に携わり、日々奔走中。とくに興味のある分野は、衣・食・住、海外文化、そして人。「季節のあるきかた」では、等身大の視点から情報を発信していく。