いずれシャガだかアヤメだか

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実家の近所にある神社。
鬱蒼と木々に囲まれていて夏でもひんやりと感じるのは日を遮る程の高い木々のせい。

常緑の緑に囲まれた境内。書道のお稽古のため毎週いやいや通ったものです。神主さんが先生だから逆らうものなら天罰が‥と。

5月に入ると一斉にその常緑樹達が新芽を出します。風が吹けば花が木からこぼれ落ち、その木々の花の香りに包まれると「そろそろお祭りだなぁ!」と感じるのです。

雨乞いの祭り時期、どんなに晴れていたってなぜかその神社のお祭りの時は一雨降るのが本当に不思議でなりませんでした。

草花好きは子供の頃から変わりません。だから近所のどこで、どの時期に、どんな花が咲くか、どんな実がなるかは全て頭にインプットされていました。

その中でも好きだった「シャガ」の花。
アヤメ属のこの花はシュッとした葉と白い花が魅力。私はその花が大好きで大好きで仕方ありませんでした。神様のいたずらか、白い花弁には黄色と紫色の線が入っていて子供ながらに関心をしたものです。

版画/岩下加奈子
版画/岩下加奈子

花の時期を終え、お気に入りの秘密の場所(近所のお庭)でそのシュッとした葉を根っこから一株掘って持ち帰り、家の前の街路樹の下にこっそり植えました。翌年には自分の「白いシャガの花」が咲くことを夢見て。

そしていよいよ5月も中旬。一年まって出てきたのはなんと‥青紫のアヤメ。その時のショックは幼心に相当な傷跡を残したのでした。

いずれ菖蒲か杜若

よく言ったものです。アヤメ科の葉はそうそう見分けがつきません。

私の場合、
いずれシャガだかアヤメだか。

ちょっとアレンジを加えてみましたが、よくよく大人になってその2種の葉を比べればアヤメの葉の方がマットでシャガは眩いほどの光沢がありますね。

今回の写真は、そんなホロ苦い思い出の「シャガ」の『葉』を使ったコーディネートです。幼心の傷跡か、シャガにはあのアヤメ色した「青い花」を合わせてしまうのです。

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そして版絵は「シャガ」の『花』。白い繊細な花びらに、黄色と濃紫が印象的な可憐で爽やかな初夏の花です。

大好きなバターサンドを送ってくださったあの人に、初夏のお花を添えてお礼のお手紙を!

版画/岩下加奈子
版画/岩下加奈子

そうそう、もう5月5日が過ぎてしまったので余談ですが、
端午の節句で菖蒲湯に使う「ショウブ」と菖蒲園で見る美しい花の「花ショウブ」は全く別物です。前者はサトイモ科、後者はアヤメ科。

ご存知でした?

岩尾 真紀 (マリキータ東京フローリスト)

投稿者: 岩尾 真紀 (マリキータ東京フローリスト)

東京を拠点に活動する花屋/フラワーコーディネーター。主に企業のプロモーションや、広告、パーティー、レセプション装花や空間コーディネートを提案。1級フラワー装飾技能士、いけばな草月流師範、グリーンアドバイザー。美味しいもの、美しい物が大好きな人々があつまる"羽根木の森サロン"では定期的にお料理教室×花レッスンの五感で楽しむマリキータレッスンを開催。当サイトでの版絵は岩下加奈子(Mariquita)が担当。