魚へんに春夏秋冬

イラスト:鈴木勝久
イラスト:鈴木勝久

焼き物にした後、冷めても身が固くならない特徴があり、幽庵焼きや西京焼きが好まれるこの魚、惣菜や弁当のおかずにも重宝します。温暖化の影響で東北でも漁獲できるほど多く獲れるようになったこの魚を表す漢字を選びなさい。

①鰆  ②魚夏  ③鰍  ④鮗  ※②は魚へんに夏

【解答】①鰆(さわら)

【解説】若魚のうちはサゴシ(サゴチ)といい、50~60センチをこえるとサワラと呼ばれる鰆の特徴は身のやわらかさ。1mをこえるような大きなサワラで鮮度のいいものは、刺し身で食べると「皿までなめる」と評されるほど美味だ。焼きものにした後、冷めても身があまり固くならない特徴ももち、惣菜や弁当の具から懐石料理まで、照り焼きや西京焼き、幽庵焼きなどに、また切り身に日本酒をふりかけアルミホイルで包んで蒸す酒蒸しなど用途が幅広い。

温暖化による海水温の上昇で、最近は青森付近まで分布を広げているサワラは、瀬戸内沿岸や京都など西日本の食文化に深く根ざしている。「サワラの値段は岡山で決まる」といわれるほど、岡山では非常に好まれる。讃岐地方(香川県)でも産卵期の4~5月に瀬戸内に来遊するサワラは春到来を告げる存在で、親戚縁者をもてなす「春祝魚(はるいお)」という祝膳の主役に、また嫁いだ娘には鰆の押し抜き寿司を嫁家への土産に持たせた。
サワラの名は見ての通り、腹がほっそりしていることから、さ(狭い)はら(腹)を語源とする。若魚のサゴシも狭腰からといわれる。
鰆をはじめ②~④とも旬の時季を表わし、ブリの幼魚、魚夏(わかし)、鰍(かじか)、鮗(このしろ)。

尾山 雅一 (日本さかな検定代表理事)

投稿者: 尾山 雅一 (日本さかな検定代表理事)

平成21年、一般社団法人 日本さかな検定協会を立ち上げる。自ら日本各地をめぐり、検定の副読本執筆まで手がける魚食文化発信のエキスパート。 日本さかな検定(愛称:ととけん)とは、近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組み。 2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年には全国12会場まで拡大。小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出。今年は6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡ほかの各会場で開催予定。