普段あんまりお味噌汁を頂かない私ですが、「おじいちゃん特製味噌汁」は心底恋しい。
あのじんわりと骨身に染みる味を今でも冬の一番寒い頃、ふと思い出します。
朝日が窓から差し込むまだ寒い台所。トントン、トントンと包丁さばきも軽快な祖父の背中。大きめのジャガイモとか玉ねぎとかも色々入っていて美味しかったなぁ。出汁をしっかりとっていたからたまに大きな「煮干し」が口に入ってきてそれも賑やかで楽しかった。仕事だ何だと日々せわしない暮らしの中で、最近そういう味はなかなか味わえなくなりました。
記憶とは、目にした「色」であり「姿形」であり時に「音」そして「香り」。思い出達はどんな引き出しにしまわれているのかなぁ。あゝ、ほんわりあがる湯気とガラス越しのまばゆい朝の光。‥ついつい思い出してしまいます。
そんな味噌汁を心待ちにしていた子供の頃、祖父母宅に遊びに行く週末に連れて行ってもらった深大寺植物園。正月明けは寒さも一番。顔までピリピリするなかで咲いていたのが蝋梅の花。香りはいいけど花としては地味だし透明でものすごく不思議な花だな〜と子供心に感じました。その良さがわかったのは大人になってからでしょうか。
蜂蜜色の薄い花びらからすっきりとした甘い香り。昔の人はこれを蜜蝋に喩えて「蠟梅」と呼んだそう。
英名では「winter sweet 」青空に溶けるようなすっきりと、でも甘い香り。キーンと息も凍る大寒の空見上げて吸い込みたいものです。
深大寺のお蕎麦を食べて、デザートのおやきを頬張りながら、この蠟梅を眺めたいなぁ。楚々とした甘い花の香りを楽しみながら。