寒気と一緒に吸い込む沈丁花の香り

版絵 岩下加奈子
版絵 岩下加奈子

全国各地で梅の花も見頃。早咲きの寒桜も咲いていて季節はいよいよ春ですね。

ウグイスやメジロもちらほらと目に付くようになりました。この日を境に胸を張って「春が来た」と言えます。とは言えまだまだ寒い日常が続きますが、木々の枝先をよく見ればふっくらとした蕾がついています。蕾だけじゃなくて木の芽も。

いつでも青々とした木々が生い茂る南国と違い、四季のある日本には常緑樹と落葉樹があります。常緑樹はモミや松、ヒバや杉など日本の山々を覆う木々で深い緑色が「しっとり」と落ち着いた印象。落葉樹はモミジやイチョウ、桜や桃など艶やかな紅葉を披露して散っていく木々です。

いずれも絵画で言うところの「風景画」には大切な要素で、描かれた木々を見ればその国がわかるというもの。モネの睡蓮の庭、ルソーの南国らしい木々に北斎の松など、絵をみるだけではなく画家の目を通して描かれた植物の「種類」を調べるのもまた楽しい。

画家ではない私は視覚ではなく日々に空気の「香り」と、顔にあたる「気温」で季節を感じる事、多々。

深い記憶の中‥ピリリと肌に突き刺さる寒さの中で、あの香りが漂ってくる‥。

そう、それは沈丁花(ジンチョウゲ)の花。

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常緑の低木で、20輪ほどが集まって手毬の様に花を付け、その一輪を見てみれば丁子(クローブ)のような風貌から沈丁花と名付けられたとか。挿し木で増やせるので小さな鉢植えから庭木にもされる植物です。

岩尾三姉妹はこの花が咲く頃、こぞって枝を折り母に献上したとか‥しないとか?(笑)我が一族が大好きな香りなのです。

この強い(強すぎる程の)芳香は寒い空気と一緒に吸い込むからこそ、その良さが増すのではないでしょうか。

版絵 岩下加奈子
版絵 岩下加奈子

2月といえば沈丁花。
蕾は濃い紅色、花が開けば淡い桃色。

香りを頼りにお探しあれ。

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岩尾 真紀 (マリキータ東京フローリスト)

投稿者: 岩尾 真紀 (マリキータ東京フローリスト)

東京を拠点に活動する花屋/フラワーコーディネーター。主に企業のプロモーションや、広告、パーティー、レセプション装花や空間コーディネートを提案。1級フラワー装飾技能士、いけばな草月流師範、グリーンアドバイザー。美味しいもの、美しい物が大好きな人々があつまる"羽根木の森サロン"では定期的にお料理教室×花レッスンの五感で楽しむマリキータレッスンを開催。当サイトでの版絵は岩下加奈子(Mariquita)が担当。