ご覧の大群は、私たちの食生活に欠かせない魚であると同時に、「海の米」とも「海の牧草」ともいわれ、世界中の海の生態系を支えるタンパク資源でもあります。
初夏から秋にかけて脂がのっておいしくなるこの魚を選びなさい。
①マアジ
②マイワシ
③マサバ
④マダイ
【解答】②マイワシ
【解説】胴に輝く黒い斑点。頭でっかちの肥満体。私たちにとってもっとも身近な魚、いわしがこの時季鮮魚売り場を賑わしている。
ふつう、いわしといえば、このマイワシ。料理はもちろん、しらす、飼料、油・・・なんでもござれの万能選手。斑点にちなんで「七ツ星」とも呼ばれている。ほかに、私たちにとってなじみ深いのは、めざしやごまめに向くカタクチイワシに、丸干しに向くウルメイワシ。きびなごやにしんも実はいわしの仲間だ。種類によって獲れる時期が異なるが、マイワシは脂がのる初夏から秋にかけて美味となる。
このいわし、漢字にすると「鰯」。水揚げするとすぐ死んでしまうから、あるいは他の魚の餌食になるから、この名がついたといわれている。
太古の昔から食料にされてきたが、大量に獲れるため、古代から下賤な魚とみられ、上流人は「いやし」なんて呼びながら、こっそり食べたとか。あの紫式部が、夫・藤原宣孝の留守中に焼いて食べていたところを見つかり、なじられると、「日の本に はやらせ給ふ 岩清水 まいらぬ人は あらじとぞ思ふ」(日本人であれば岩清水八幡に詣でない人はいないように、いわしを食べない人もいない)とやり返したのは有名な話。
近年の健康食ブームで、動脈硬化を防ぐエイコサペンタエン酸(EPA)や頭脳の働きをよくするドコサヘキサエン酸(DHA)を豊富に含むこの万能選手の株も上がったかと思うと、漁獲量は1988年をピークにして激減。年間400万トンから、96年には22万トン、2005年には3万トンを切ってしまった。「幻の高級魚になるのでは」とささやかれたが、近年、復活の兆しをみせている。ことに今年は豊漁で、お値段でも万能選手ぶりを発揮している。