甘いクチナシとびわの実

版絵 岩下加奈子(Mariquita)
版絵 岩下加奈子(Mariquita)

甘いクチナシとびわの実。
この二つの共通点は?

もし探すのならば、夏至の頃にふと気づくと‥そこに突然、突如として凄い存在感で「ある」という事だけ。

そして、そう言えば実がどちらもオレンジ色だという事。

ビワの実は種ばっかり。熱烈に好きではありません。でも種と実の境界線にある薄皮みたいな場所がお気に入りです。
あの控えめな甘さとジューシーな果肉は地味の美学をこよなく愛する人々に密かに愛されているはず。だから百貨店の果物売り場に絶対に並んでいるのでしょう。

版絵担当は…その地味な美学、まんまる枇杷の大ファンです。
ほのかな酸味が引き立てる爽やかな甘みは、この果実にしかない大人の甘味で
この時期だけの贅沢。
大粒の青果は高価ですが…庶民はコンビニで!きらめくゼリーと出会えますよね。

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「ビワの出荷時期にはハランの入荷が減るよ。だから気をつけてね。」と昔むかし花屋の先輩に聞きました。ビワ農家さん=ハラン農家さんなのか??謎はまだ解いていません。真相は如何に。

クチナシの実は知らない人の方が多いのでは?
“栗きんとん” を作るとき、あの綺麗な黄金色に着色するのが「クチナシの実」です。お菓子袋の裏側、材料をチェックするとクチナシ色素とかいてある事も多々。

甘い香りの山梔子(くちなし)は西洋ではガーデニアと呼ばれています。和名の方がなんだかとても素敵です。

雨に濡れて一晩。あっという間に茶色くなってしまう 真っ白で肉厚な花びらの、その「儚さ」と、むせかえる程に濃厚な甘い香りが離さない「いつかの記憶」。

この花の時期に失恋とかはしたくありません‥。毎年思い出しそうです。記憶とは不思議なもので、その香りでリマインドさせられる事が多々あるのです。

窓の外、お向かいにあるお寺さんの庭に植えられた立派な枇杷の木。
この熟れたビワの実を狙ってハクビシンがやってくる事を‥今日も猫達と一緒にまだかまだかと待っています。

もし来たら、
「お一つお味見に投げてちょうだいよ。」と言いたいのです。

岩尾 真紀 (マリキータ東京フローリスト)

投稿者: 岩尾 真紀 (マリキータ東京フローリスト)

東京を拠点に活動する花屋/フラワーコーディネーター。主に企業のプロモーションや、広告、パーティー、レセプション装花や空間コーディネートを提案。1級フラワー装飾技能士、いけばな草月流師範、グリーンアドバイザー。美味しいもの、美しい物が大好きな人々があつまる"羽根木の森サロン"では定期的にお料理教室×花レッスンの五感で楽しむマリキータレッスンを開催。当サイトでの版絵は岩下加奈子(Mariquita)が担当。