一雨、また一雨。寒さもようやく和らぎ、春の花木に花が咲き始めました。市場は春のお花で本当に賑やか。
色とりどりのチューリップ、フワフワ柔らかな花びらのラナンキュラス。顔をあげれば桃花の大きな枝物がまだ季節前の桜と肩を並べて所狭し大田花卉の仲卸に並んでいます。
秋にクリスマスのポインセチア。いつだって常に2ヶ月季節先取りの私たち花屋さんでも、その時期だけしか手に取れない花材として「ぜんまい」があります。
薇と書き、ゼンマイとよむ。あの、グルグルした植物です。
森の中に入ると、生い茂るシダの間からピョコリと顔をだしている毛むくじゃらのあの子です。ゼンマイの語源は「銭巻き」だという説なんかもあって、巻いた姿が古銭に似ているんだとか。
超脇役なこの花材。それでも季節感を感じられるものとして、荘厳な薔薇やユリたちの置かれた棚の‥ほんの片隅に細々と肩身狭く並んでいます。うっかりしていると目にもとまらぬ健気な「それ」を目ざとく見つけては仕入れ、アレンジメントにプラスします。
地味なものこそ、愛らしい。
そうそう、そういえば旬の味覚としてのゼンマイも毎年我が家の味として登場していました。山形に嫁いだ姉から袋いっぱいに届く山菜。小分けの袋にグレーの粉が添えられていて一体何よ?と思ったものは灰汁を抜くための灰でした。
さて今日の一枚。
版画にするとこんな感じ。
手帳に押して完成です。薇の中を緑にするか一色にするか相当悩んだようでした。この植物の良さがうまく表現できていますね。
アレンジするとこんな感じ。
パキッとした赤いラナンキュラス。そして、忘れな草。花々の陰からひっそりといい味を出しているのが‥
そう。
「ぜんまい」。
どこにいるかわかりますか?
ああ、啓蟄。
虫たちも動き始めるのですから、私も重い腰をあげて‥そろそろ運動しないと。