今年の小寒は1月5日。築地市場では5日朝、取引の幕開けとなる初競りが行われます。初競りの目玉は築地の花形、まぐろ。この日ばかりは一匹、100㌔を上回る大型の本マグロで占められます。体の色と希少価値から「黒いダイヤ」とも、「海の宝石」とも呼ばれるマグロを選びなさい。
①キハダマグロ
②クロマグロ
③ミナミマグロ
④メバチマグロ
【解答】
②クロマグロ
【解説】
赤身はさわやかな血潮の香りと密度の濃いうまみ、トロは濃厚でありながら決してしつこくない。シャリとよくなじみ、寿司のためにある、というと言い過ぎだろうか。
話題にも事欠かず、江戸時代の下魚(げざかな)から、いまや超高級魚へ。やっかいもののトロが称賛の的に。近年の築地初荷のセリ値は、1月5日朝のTVニュースに、新聞の社会面の記事になるほど。2013年には222㌔の青森県・大間で水揚げされたクロマグロに1億5540万円の値がついたのは、記憶に新しい。
一方で、深刻な資源問題を抱えており、その年の漁獲枠は、資源管理の国際機関によって決まり、築地にも影響を投げかける。これを受け、絶対不可能とされてきた養殖、それも卵を育てるところから始める完全養殖にも成功、セリ場でも常連になっている。マグロ類のなかでも、本マグロと呼ばれるクロマグロの天然資源量は2%。まさに海の宝石であり、真の上ものは憧れの存在となっている。
マグロの寿司は、赤身を醤油に漬けて握る「づけ」から始まり、人気に。変色をカバーするためだが、醤油のうまみのグルタミン酸とマグロのうまみ成分、イノシン酸がマッチング。相乗効果でおいしさを生む、という大きな効用があった。トロにばかり目が行きがちだが、マグロの鉄分からくる赤身魚特有のほのかな酸味が楽しめるのが、通好みの赤身だ。
マグロが寿司ダネとなったのは、江戸期の天保年間(1830~1844)、江戸近海でマグロが大獲れしたことに始まる。下魚扱いのマグロだったが、なにしろ安い。そこで日本橋魚河岸とは目と鼻の先、馬喰(ばくろ)町の屋台寿司「恵比寿ずし」が使ったところ、けっこうな評判となった。以後、高級な寿司屋は敬遠したものの、お手軽な屋台寿司では人気一番のタネとなっていった、と伝わる。
築地のせり場にならぶ生食用のマグロは、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロの4種。世界の生食用のマグロは築地をめざすといってもよい。
南半球に分布するミナミマグロはインドマグロとも呼ばれ、クロマグロとともに高級品として知られる。ひときわ目が大きいメバチは関東以北で、朱色が淡いキハダは関西や名古屋で好まれる。20㌔以下のクロマグロの幼魚は関東でメジマグロ、関西でヨコワと呼ばれ、5月から7月にかけて九州や日本海で漁獲される夏のマグロ。
1月5日、身の引き締まる思いで始まる初荷。めでたい日ゆえか、高値を期待してか、この日ばかりはメディアでもおなじみの津軽海峡のクロマグロが勢ぞろいする。