殻からジュッと汁がこぼれ、芳しい香りがあたりに広がるような焼きガキ。独特の旨みがたまらない海の味覚、カキが古くから重宝されてきたのは、おいしさはもちろん、栄養価の高さにありました。栄養素たっぷりのカキをあるものに例えた呼称を以下から選びなさい。
①海の小判
②海のパイナップル
③海のフォアグラ
④海のミルク
【解答】
④海のミルク
【解説】
冬の足音がすぐそこに聞こえる季節になると、牡蠣(かき)が日ごとに栄養と旨みを増してくる。魚介類の生食を敬遠する欧米人もこの牡蠣だけは例外だ。万国共通、生でも賞味されている。冬のパリの名物料理もレモンを添えた生牡蠣。レストランではみんながオードブルに注文している。ラテン系の人々はもちろん、イギリス人もドイツ人も目が無いようだ。
カエサル(シ-ザー)のイギリス遠征は牡蠣を求めるためだったという説もあり、ナポレオンも牡蠣を常食していたといわれ、鉄血宰相ビスマルクは175個(!)を一度に平らげたという。これら偏執的牡蠣主義者を前にすると、うかつに“牡蠣好き”だなんて言えなくなりそうだ。バルザックやヘミングウェイら文豪も恐ろしく牡蠣好きだったそう。(牡蠣主義者って、どなたもひとクセもふたクセもある方ばかり・・・。)
ふっくら、プリプリした身と、とろりとした食感が、かくも人々を魅了してきた牡蠣は、「海のミルク」と呼ばれるほど栄養豊富な海の幸でもある。たんぱく質、グリコーゲン、ミネラル、ビタミン各種などを豊富に含んでいるうえ、低カロリー。消化もよく、血中コレステロールを下げるタウリンも多く、まさに冬の優等生。かのクセものたちのような大食いはいかがなものかと思うが、たっぷり食べると、冬場の体力がつくこと、まちがいなし。
産地として有名な北海道厚岸の“アッケシ”はアイヌの言葉で“牡蠣のある所”という意味だそう。1673年ごろ、安芸国草津(現在の広島市西区)の小林五郎左衛門という漁師が、海中にひびを建てる養殖法を発見。以来、広島は日本一の産地に。広島の漁師たちは、採れた牡蠣を船に積んで大阪へ。幕府から独占営業権を得て、川に屋形船を浮かべて、牡蠣の販売とともに牡蠣料理を出すようになった。道頓堀や淀屋橋に浮かぶ牡蠣舟は戦前までは大阪名物だった。
大正時代、稚貝のついた付着器を筏(いかだ)から海中に垂らす垂下式養殖法が開発され、養殖は飛躍的に増大。いまは日本で年間20万㌧以上が生産されている。その大半がこの時季に旬を迎えるマガキ。欧米ではRのつかない月には食べるなといわれるが、日本海の岩牡蠣は例外的に産卵前の夏場が旬。
お店にならぶむき身のマガキには、「生食用」と「加熱用」のラベルが貼られている。新鮮な方が「生食用」で、少し日が経った方が「加熱用」と思いがちだが、実は出荷前の作業で一定時間紫外線殺菌した海水で殺菌したものが「生食用」。殺菌せず、水揚げしてすぐに出荷したものが「加熱用」。決して加熱用のものの鮮度が悪いということはなく、むしろ栄養も旨みも多い。加熱するときは加熱用を選びたい。
旬を迎え、丸々と太った牡蠣を網で焼き、心ゆくまで味わいつくす今では全国で見られる牡蠣焼き小屋は、すっかり冬の風物詩に。焼くときはまず、殻が平らなほうを下にして、一度返して汁気があふれてきたら食べ頃のサイン。そのままで、あるいはレモンを搾ったり、醤油をかけても。プリッとした食感の中から、海の濃厚な旨みと風味がほとばしる。火を通しすぎぬことがポイントだとか。