しその実の塩づけ

穂紫蘇

今年も食欲の秋がやってきた。旬をむかえる秋刀魚に、鯖、焼いたり煮つけたりして、炊きたての新米といっしょにパクリ。

部活動に明け暮れる高校生のようにご飯3杯はイケる気さえしてくる季節である。
そんな食欲の季節に、爽やかな香りを添える名わき役がシソの実だ。我が家では塩づけにして楽しむのが定番となっている。夏には大葉として食卓に色どりと香りを添えてくれたシソが、秋の気配を感じるころには花が咲き、秋分のころに実を結ぶ。大葉としては薬味となり、花紫蘇となってはお刺身の皿を飾り、シソの実となってはまた薬味として重宝される青紫蘇。「もういいでしょ!勘弁してよ!」とシソにはいわれそうだが、秋の食欲に突き動かされている私は、シソの実を添えて何を食べようかを考えるのに忙しいので、もしシソが嘆いても聞かないふりをしようと決めている。
秋の食卓にシソの実をむかえるには、まず丁度よい状態の穂紫蘇を入手する必要がある。シソの穂先に花が2,3個咲き残っている穂紫蘇を選ぶのがポイント。穂が大きくなりすぎると、種が硬くなりすぎるので、柔らかな緑色のものがいい。穂紫蘇さえ準備できれば、あとはすごく簡単にできてしまうのもシソの実の塩づけのいいところだ。

①シソの実を穂からしごきとってたっぷりの水でよく洗い、ザルにとる。これを数回繰り返して、きれいになったしその実の水気をしっかりとる。

②シソの実100gに塩大さじ2杯ほどの割合で合わせてザルに広げ、2~3日かけて乾燥させる。パラパラと結晶化したら出来上がり。

シソの実の香りを封じ込めた塩づけは、塩づけというより、「シソの実の香りをまとった塩」といったほうがぴったりかもしれない。
新米おむすびの中にいれたり、あるいは、最中の餡の中にひと粒しのばせたり、煮魚や焼き魚に添えたり、お肉料理にだって抜群に合う。今年も香りの小爆発に、ますます食欲もバクハツする予感がしている。

しその実

冬木 れい (料理研究家・国際薬膳師)

投稿者: 冬木 れい (料理研究家・国際薬膳師)

料理研究家・国際薬膳師 栃木県生まれ。真言宗の寺に生まれ、幼少時より行事料理、郷土料理に興味を持つ。古典レシピ、薬膳などを研究しつつ、現代人の食卓事情に合わせた料理法を研究テーマにしている。地域食材にも造詣が深く、レシピや商品開発も数多く手がける。「季節のあるきかた」では、日々の暮らしを綴りながら、折々の美味しさを発信していく。