脂がのったさばを一本丸ごと竹串に刺し、炭火で豪快に焼き上げた“浜焼き鯖”は、さばのうまみを知り尽くしたこの土地ならではの郷土の味です。「さば街道起点 生鯖塩して荷(にな)い 京行き仕(つかまつ)る」のプレートが歩道に埋め込まれたこの地を選びなさい。
①山形県酒田市
②富山県氷見(ひみ)市
③福井県小浜市
④鳥取県境港(さかいみなと)市
【解答】③福井県小浜市
“浜焼き鯖”写真提供:福井県観光協会
【解説】
福井県小浜(おばま)から京へと通じる若狭街道70㌔余りは“鯖街道”と呼ばれ、若狭湾で獲れたさばを塩して行李で担ぎ、徹夜で京へ。ずしりと塩鯖が入った荷を背負った魚荷衆にとっては「京は遠ても十八里」と自らを励ます山道だった。一晩かけて終点につくと、塩加減はちょうどよい頃合いに。それを酢でしめ、京名物・さばずしが誕生した。
「さば街道起点・・・」のプレートが歩道に埋まる小浜市のいづみ町商店街。近づくにつれ、香ばしいにおいが漂ってくる。アーケードの入り口付近にあるさば専門店の店頭では、丸ごと串刺しにした鯖が炭台の上でもうもうと煙を上げている。串を抜いて適当な大きさに切り分け、しょうが醤油や三杯酢、大根おろしを添えていただくのが定番の食べ方。近年はこの浜焼き鯖をアレンジした若狭名物“焼き鯖寿司”が空弁から火がつき、いまや全国で不動の人気を誇る。
このほかにも、鯖の糠漬け“へしこ”や、へしこを塩抜きして米と麹で漬けた“なれずし”、独自の醤油仕立ての干物“おばま醤油干”など固有の鯖文化が今でも息づく小浜で始まった、全国でも珍しいさばの養殖。
この秋、10月29日・30日には小浜の鯖文化を味わいつくす「鯖サミットin小浜」が御食国(みけつくに)若狭おばま食文化館前で開催される。初日に“新・小浜鯖”が披露され、2日目にはテレビでもおなじみのウエカツこと上田勝彦さんによる「鯖トーク&シンポジウム」が予定されている。
さばの惣菜は家庭料理の王道メニュー。塩焼き、味噌煮、しめ鯖、文化干し、竜田揚げ・・・、脂ののったさばは、味わい方さまざま。店先で見かけるマサバとゴマサバのうち、秋に旬を迎えるのは秋サバと呼ばれるマサバのほう。北の冷たい海から南下してきた鯖はまるまると太って脂がのりうまみがぐんぐん増し、煮ても焼いても口の中でとろける旨さ。
「秋さば、嫁に食わすな」といわれるが、なんとも意地悪な話。卵をもたない秋さばは縁起が悪い、とか、嫁がさばで食中毒にかかると困る、という解釈もあるそうだが・・・。
関(せき)鯖や岬(はな)鯖―いずれも豊後水道―、八戸前沖鯖、金華鯖(宮城県石巻市)、松輪の黄金鯖(神奈川県三浦市)といったブランド鯖や新鮮な魚が手に入れば刺身もいいが、「鯖の生き腐れ」といわれるとおり足が早いので、生で食べるときはしめ鯖(関西では生(き)ずしといい、これを用いた鯖棒ずしやバッテラが親しまれる)に。
写真はマサバ。寒ブリで名高い②の富山県氷見(ひみ)市は塩ぶりが飛騨地方に運ばれた“ぶり街道”のかつての起点。