懐かしい味わい 山菜そば

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春といったら山菜を思い浮かべる、という人はきっと多いに違いない。

鮮やかな緑色に、力強い香りで、居酒屋のメニューに山菜の天ぷらが登場したり、この前のぞいたマルシェでも採れたての山菜を売っているお店がたくさんあった。でも私の世代では…どうだろう。春になると山菜が食べたくなるの、とか、あのほろ苦い感じがたまらないよね、なんて会話が繰り広げられることは、これまで一回もなかった気がする。…なんてことをいったあとで恐縮ですが、今回はその山菜そばを食べるの巻、なのです。

向かったのは新宿、西口の少しごみごみしたなかに突如現れる和のたたずまいが「渡邊」だ。この場所にあって、豊富なメニュー、手ごろな価格で手打ちそばを味わえるのだから、平日のお昼時にはきっとビジネスマンでいっぱいになるのだろう。

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早速、山菜そばを注文。おそばだけを食べてみると、もちもちとした弾力とこしがある。こちらのお店の手打ちそばは二八そばで、店内のガラス張りの一角で、運が良ければそばを打っている姿が見られるそうだ。どんなふうにこのそばが作られるのか、見てみたかったなあ…残念。

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山菜そばの具材として入っているのは、うどとぜんまい、それからたけのこに椎茸、キクラゲだった。うーん、やっぱり地味だよね…。そして、なんか山菜の量、少なくない?

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それでも、久しぶりに味わう山菜は、おそばといっしょに口に含むと、その特有のえぐみがおいしく感じられた。昔はちょっと苦手だったんだけどね。っていうか、すごく久しぶりにこのえぐみを味わっているなあ…。と考えて、気がついた。この味は、かつていっしょに暮らしていた祖母が、よく作っていた山菜の煮物の味と一緒だ。

すると、本当に勝手だけど、これまであまり見向きもしなかった山菜が、急にものすごーく愛着のあるものに思えてきた。もっと食べたーい、具だけでいいからおかわりをくれー! と叫びたくなるほどに。これからは私、「春といったら山菜そばを食べなきゃね」なんて、友だちに話してまわっているかもよ。

きっと多くの人に、「おふくろの味」があると思うけれど、私にとってこれはお母さんじゃなくて、おばあちゃんの味だ。旬とか季節感を大事にした料理を作っていたのは、我が家では母よりも祖母だった気がする。その味を思い出したくなったら、また来たい。だからもうちょっと、山菜の量を増やしてくれるといいんだけどな。

◇今回のお店は
渡邊
住所:東京都新宿区西新宿1-12-10
新宿駅から、徒歩5分ほど

◇いただいたのは
冷山菜そば 900円(税込)

投稿者: 吉田 真那 (季節のあるきかた編集部)

茨城県出身。幼いころから本や雑誌を読むことが好きで、憧れだった出版業界に入る。現在は、美容や食関連の書籍・広告の編集に携わり、日々奔走中。とくに興味のある分野は、衣・食・住、海外文化、そして人。「季節のあるきかた」では、等身大の視点から情報を発信していく。