新品種米の新米 銀河のしずく

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これから、田んぼは稲刈りの最盛期を迎える。新米の季節を目前にして、土鍋炊きやら鉄鍋炊きやらをいろいろと試している。

というのも、今年は私も少なからずかかわりのある岩手の新品種米が「新米」デビューするので、ここ一番に美味しく炊かなくては、と意気込んでいるのだ。
ここ数年、新品種米が続々と登場している。昨年、青森の「青天の霹靂」の登場は鮮烈だったし、今や50年来揺るがぬ米の王座「コシヒカリ」の隣には、「つや姫」、「ゆめぴりか」などが定番のように並んでいる。そしてこの秋に「新米」デビューするのが、岩手の新品種米「銀河のしずく」である。
新しい品種が誕生する根底には、やはり私たちの美味しさへのあくなき追及心があるのだろう。炊き立ての新米を噛みしめたときの甘みには、「ああ、お米の国の人だもの。」と血糖値のことなどすっかり忘れ、ついついお代わりしてしまう。しかし、美味追究が品種改良の原動力である一方で、地球温暖化など様々な環境の変化に対応していかねばならないという大きな宿命を、新品種米は負っている。
「銀河のしずく」の場合、環境対応のためにかけ合わす品種を選別して稔らせた種は51粒あまり。そこから出発して、一株一株、一粒一粒、世代交代の中で一番いい適性を見分け、食味の良さを見極めていく作業に10年の歳月がついやされた。こうして誕生した「銀河のしずく」は、際立って白く、艶やかで、やわらかな甘みが軽やかに続く味わいのお米となった。
新品種米は、人間の食欲と科学的思考が凝縮された結晶なのだ。その結晶を美味しく炊こうと試行錯誤していたある日、ふと土鍋でなく南部鉄器釜で炊いてみようという気になった。炊きあがりは上々の出来、というより最上の出来。カニ穴の開いたベストな炊き具合で、釜の下のほうのお米まで艶やかに粒だっている。炊きたての美味しさは言うまでもないが、南部鉄器炊きのお米は冷えても美味しい。むしろ、炊きたての米とは違った滋味深い美味しさがある。知ってしまった冷や飯の美味しさのせいで、「銀河のしずく」の新米デビューを心待ちにしながらも、人間ドックが怖い初秋である。

冬木 れい (料理研究家・国際薬膳師)

投稿者: 冬木 れい (料理研究家・国際薬膳師)

料理研究家・国際薬膳師 栃木県生まれ。真言宗の寺に生まれ、幼少時より行事料理、郷土料理に興味を持つ。古典レシピ、薬膳などを研究しつつ、現代人の食卓事情に合わせた料理法を研究テーマにしている。地域食材にも造詣が深く、レシピや商品開発も数多く手がける。「季節のあるきかた」では、日々の暮らしを綴りながら、折々の美味しさを発信していく。