笑顔こぼれる 秋の味覚

さば1

この輝き、まさに旬真っ盛り。脂ののりも抜群で、酢でしめていただくのも良し、炊き立ての新米と一緒に塩焼きもたまりません。漁の最盛期を迎えているのは、東北の三陸沖。身が太り、まさに食べ頃の秋の味覚を選びなさい。
①アジ
②イワシ
③サバ
④サワラ 

【解答】③サバ

【解説】
日本の食卓に欠かせない青魚、サバ。秋真っ盛りのこの頃三陸沖に揚がるサバは、4月頃伊豆半島沖で産卵し、黒潮にのり北上、9月頃北海道沖でたっぷりエサを食べこみ、今度は産卵に備え親潮にのって北の海から下る。親潮と黒潮がぶつかる三陸沖はエサとなるプランクトンが豊富な国内有数のサバの漁場だ。
日本近海のサバにはマサバとゴマサバがあり、南日本に多い春~夏のゴマサバに対し、マサバは“秋さば、寒さば”の言葉があるように、秋から厳寒にかけてがおいしい時季。脂ののった秋さばは味わい方さまざま。塩焼き、みそ煮、しめ鯖、竜田揚げ、文化干し・・・といずれも家庭料理の王道メニューだ。
なかでも、マサバの真骨頂はみそ煮だろう。脂ののったサバにこってりしたみそが見事によくあう。さば以外、みそ煮という料理はあまりなじみがない。日本人の祖先の知恵に脱帽だ。

味が染みやすくするため切り身に包丁を入れ、片栗粉をつけて油で揚げる。これを短い時間で煮ると、衣で脂と旨みが閉じ込められたふわとろのみそ煮に。
味が染みやすくするため切り身に包丁を入れ、片栗粉をつけて油で揚げる。これを短い時間で煮ると、衣で脂と旨みが閉じ込められたふわとろのみそ煮に。

“さばの生き腐れ”といわれるようにサバは傷みやすいことでも有名。冷蔵保存がない時代、輸送は大変だった。福井県小浜(おばま)から京へと通じる若狭街道70㌔余りは“鯖街道”と呼ばれ、若狭湾で獲れたさばを塩して行李で担ぎ、徹夜で京へ。一晩かけて終点につくと、塩加減はちょうどよい頃合いに。それを酢でしめ、京名物・さばずしが誕生した。

画像提供:㈱いづ重
画像提供:㈱いづ重

一方、鯖街道起点の小浜にはサバのうまみを知り尽くしたこの土地ならではの郷土の味がある。脂がのったさばを一本丸ごと竹串に刺し、炭火で豪快に焼き上げた“浜焼き鯖”だ。

串を抜いて適当な大きさに切り分け、しょうが醤油や三杯酢、大根おろしを添えていただくのが定番の食べ方。近年はこの浜焼き鯖をアレンジした若狭名物“焼き鯖寿司”が空弁から火がつき、いまや全国で不動の人気を誇る。画像提供:福井県観光協会
串を抜いて適当な大きさに切り分け、しょうが醤油や三杯酢、大根おろしを添えていただくのが定番の食べ方。近年はこの浜焼き鯖をアレンジした若狭名物“焼き鯖寿司”が空弁から火がつき、いまや全国で不動の人気を誇る。画像提供:福井県観光協会

このほかにも、北陸一帯の名物、鯖の糠漬け“へしこ”や、へしこを塩抜きして米と麹で漬けた“なれずし”、独自の醤油仕立ての干物“おばま醤油干”など固有の鯖文化が小浜に今も根付いている。

サバを読む、という表現がある。生き腐れするほどに鮮度落ちが早い魚ゆえ、目の子勘定(目算)でろくすっぽ数えることなしで流通していた。それで良し、とするほど獲れたが、今は違う。漁獲制限の対象になるほど漁獲量も減り、高級白身魚をはるかにしのぐ値がつくモノすらある。
その代表格、豊後水道の関さば(大分佐賀関)や岬(はな)さば(愛媛佐田岬)、八戸前沖さば、金華さば(宮城石巻)、松輪の黄金さば(神奈川三浦)といったブランド鯖や新鮮な魚が手に入れば刺身もいいが、生で食べるときはしめ鯖―関西では生(き)ずしといい、これを用いた鯖棒ずしやバッテラが親しまれる―に。

全国でも珍しい、サバを刺身で食べる博多名物‘ごまさば’。ゴマサバでなく、マサバの刺身に胡麻を和え、醤油とわさびを混ぜて食す。
全国でも珍しい、サバを刺身で食べる博多名物‘ごまさば’。ゴマサバでなく、マサバの刺身に胡麻を和え、醤油とわさびを混ぜて食す。

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尾山 雅一 (日本さかな検定代表理事)

投稿者: 尾山 雅一 (日本さかな検定代表理事)

平成21年、一般社団法人 日本さかな検定協会を立ち上げる。自ら日本各地をめぐり、検定の副読本執筆まで手がける魚食文化発信のエキスパート。 日本さかな検定(愛称:ととけん)とは、近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組み。 2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年には全国12会場まで拡大。小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出。今年は6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡ほかの各会場で開催予定。