初夏の潮風とともに脂がのって、おいしくなるアジ。いままさにこの時季、5月から6月においしさのピークをむかえています。産地の漁師たちだけが愉しんでいたアジの生食が日本中に広がったのは、東京オリンピックの少しあとのこと。アジの代表的な生食のうち、誤りを選びなさい。
①さんが
②たたき
③なめろう
④水なます
解答:①さんが
解説:
料理法が多様なアジは漁師料理をルーツとする郷土料理が豊富な魚。ムロアジはトビウオと並んで、伊豆七島・八丈島名物の「くさや」の原料となる。また、薬味と味噌をアジの身と細かく包丁でたたく「なめろう」は房総の漁師料理。これを氷水に溶けば「水なます」といい、平たくまとめて焼けば「さんが」という。
1965年ごろ、伊豆半島周辺の郷土料理「たたき」に東京の料亭の板前が感動して店で出したところ、一気に広まり、アジが生食できることに日本中が気がついた。たたきの起源は、伊豆の漁師さんが船上で内臓を手でとって、味噌などとまぜた「沖なます」だ。塩焼きか干物が中心だったマアジの料理に、一大革命をおこしたのが、生食の“発見”だったのだ。
ひとくちにアジといっても、断面が平たいマアジの仲間と、丸みを帯びたマルアジの仲間がある。後者はマルアジのほか、いずれもクサヤの原料となるムロアジ、クサヤムロなど赤身系のアジがこれにあたる。前者は肉質が白身系で、マアジのほか高級魚のシマアジ、魚に詳しい人たちのあいだで味がいいわりに安いと評判のカイワリなど。そのなかで鮮魚・加工品原料としてもっとも人気があるのがマアジだ。
マアジは成魚になると沖合を回遊するのが普通。しかし、内湾や瀬に居すわり、回遊しないのも一部ある。これらは「瀬付き」と呼ばれ、数は少ないが珍重されている。回遊するアジが黒っぽい色をしているのに対し、瀬付きは黄色や金色をしているため、産地や市場では回遊するものを「黒アジ」、瀬付のものを「黄アジ」「黄金アジ」などと呼び分ける。
瀬付きは回遊しないため脂がのっていて、黒アジより味がよいとされ、各地でブランド化が進んでいる。黄アジブランドをざっとあげただけでも、山口萩の「瀬つきアジ」、島根浜田の「どんちっちアジ」、長崎の「ごんあじ」に「旬(とき)あじ」、宮崎延岡の「灘あじ」など等。
アジのトップブランド「関アジ」は黒アジだが、一本釣りで獲り、一日生け簀で寝かせ出荷直前にたくみな活け締めを行い、すばらしい身質で入荷する。ブランドではないが、淡路島周辺と、鹿児島の八代海を漁場とする出水(いずみ)のマアジはこだわりの強い寿司屋など全国のプロの料理人がこぞって賞賛する。
マアジはうまみ成分のイノシン酸が豊富で、脂肪量とのバランスが良く味は淡泊だが、開いて天日干しした干物は、味が凝縮され、生食とはまた違った旨みを楽しむことができる。また、動脈硬化や血栓の予防にもよいとされるDHA,EPAもサンマ、サバ以上に含まれている。
かくも懐の深いアジ、たかが大衆魚と侮ることなかれ。
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