太陽が真東から出て真西に沈み、春分同様、昼と夜の長さが等しくなります。
国民の祝日である秋分の日とその前後3日間を合わせた7日間が秋のお彼岸ですが、太陽が極楽浄土があるという真西に沈むことから亡くなった人を偲ぶ日ともされています。
「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉の通り、秋分を境に暑さも落ち着いて秋らしい爽やかな陽気になります。空の様子も、うろこ雲が現れるなど、すっかり秋の様相に変わります。
「そらいちめんに青白いうろこ雲が浮かび月はその一切れに入って鈍い虹を掲げる。
町の曲り角の屋敷にある木は脊高の梨の木で高くその柔らかな葉を動かしてゐるのだ。
雲のきれ間にせはしく青くまたたくやつはそれも何だかわからない。」
これは、宮沢賢治の「うろこ雲」という短編集の冒頭ですが、賢治は数々の作品のなかでうろこ雲について描写しています。法華経信仰と農民生活に根ざした作品を残した賢治にとって、この秋のうろこ雲はとても身近なモチーフだったのかもしれません。晴れた秋分のころ、ふと見上げた空を泳ぐように浮かぶうろこ雲。自分の内を見つめる季節が始まります。